栃木県に住んでみてわかったことがある。
自然が溢れている。
海はないけど、水流の音をそこはかとなく感じる。
そして、人が優しい。
基本、都会になじまないDNAを持っているせいか、ここでの暮らしは身体の細胞とあてはまったように感じる土地。
田園風景が続く、夕暮れ似合う大田原市親園に「秋元珈琲焙煎所」さんは佇んでいる。
そう、営業している…ではなく、佇んでいるのである。
けれども、いつも人の足が途絶えないこの焙煎所は不思議だ。
それは、一度扉を開いたら、誰しもが虜になっていくのに気づくからだ。
豆と真摯に向き合う秋元さん。
丁寧に焙煎された香りと味は、まるで彼が愛する親園の風景そのものを投影しているように感じる。
朝露 黄昏 夕闇。
そんな言葉が豆たちにちりばめられているのも頷ける。
お客さまと呼吸を合わせ、やわらかさを纏い、会話する秋元さん。
まるで自然と人がそこに集う、暖炉の様なあたたかさを湛えた人だと思った。
死ぬまでずっと焙煎屋でありたいし、豆と戯れていたい。
そのためには、ずっと健康であるべきですね…とおっしゃっていた。
最後にもうひとつわかったことがある。
抜きんでた有名カフェが多いと言われている栃木県。
どの店も「好き」が高じてこうなったというか、とても自然体で、無理やり感を感じられない。
店主たちの芯にある確固たるポリシーを感じるものの、
それがふんわりと伝わるしなやかさがある、ということ。
カフェは地域のハブ的存在。
人と人を繋げる重要な場所だと思う。
この先の秋元さんの未来も、どんな風になっていくんだろうと妄想が止まらない。